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2022.01.25 お悩み相談
【質問】仕事ってなんでしょうか?
【質問】
今、中学2年生ですが、学校のキャリア教育で将来の仕事のことを考える時間がありました。いろいろな職業があると思いますが、僕はまだ自分が働く姿が想像できないし、何をしたいのかもわかりません。そもそも仕事ってなんなのでしょうか?生活していくために必要なことはわかりますが、「やらなければならないこと」というマイナスなイメージしか持てません。
【回答】
ご質問ありがとうございます。自分からやりたい職業なんて見つからない、と相談者さんが感じられていることは、それは職業ということの本質を衝いているからです。実は職業とは、「あなたがやりたい仕事」などではないのです。職業とは、「周りの人があなたにやってもらいたい仕事」です。職業を持つと生活ができるというのは、仕事をすることによって対価(金銭)を得ることができる、ということです。
それが可能なのは、周りの人があなたにやってもらいたい仕事をあなたが行うことで、その労力に相応する対価(金銭)を支払ってもよいと周りの人が考えるからでしょう。周りの人は、あなたの技術や見識や体力をみはからって、あなたならできるだろう、あるいは、あなたしかできないと思って仕事を持ってきてくれます。それをあなたはこなして、なんらかの対価を得ます。そのことが繰り返されればそれが職業となります。それが職業の本質です。
そう考えれば、「自分のやりたい仕事」は、職業とはそもそもまったく関係がないことがわかるでしょう。だからあなたの言われるように、仕事とはつねに「やらなければならないこと」です。それは「周りの人に求められていること」なのであり、それを「責任」と呼ぶのです。
相談者さんも、学校で、なにかの委員会に属しているでしょう。図書委員や清掃委員や風紀委員など、学校ではなにかの委員会に所属することが求められます。その仕事は別に自分のやりたいことではないけれど、それでもやっていくうちにだんだん面白くなることもあったでしょうし、あるいは周りから思いがけなく評価されたこともあったかもしれませんね。
そうした経験を繰り返すことで、あなたも周りの人も、あなた独自の技術や見識や体力を発見していくのでしょうし、それらが鍛えられもするのでしょう。原理としては、職業を見つけるのはこれと同じことです。職業を英語で「コーリング(calling)」と言います。「神から呼びかけられた仕事」という意味です。「神」を「周りの人」と言い換えてもいいでしょうが、周りから呼びかけられ、こうしてみてください、と言われている仕事が、あなたの職業であるのです。
あなたは周りから何を求められていますか。言い換えれば、周りのために、どんな部分で、あなた自身の技術や見識や体力を使うことができるでしょうか。そのように考えてみて、あなただけに求められている仕事を、ぜひ見つけてみてください。
2021.09.03 お悩み相談
【質問】部活から引退しても勉強に身が入らず困っています。
【質問】
中学三年の女子です。三年間部活動に頑張ってきましたが、三年となり、この八月で引退となりました。親からは、「さあこれから受験をがんばんなさい」と言われますが、そんなに簡単に切り替えられません。ずるずると引きずっている私を見て、「未練たらしいな」と言われます。私もそう思いますが、さびしくて仕方ありません。どうしたらよいでしょうか? (10代女性)
【回答】
ご質問ありがとうございます。質問者さんは中学生なのですね。これまで部活にがんばってきたけど引退して、さびしい、気の抜けた思いをされているのですね。「受験をがんばんなさい」と言われても、そう簡単に切り替えられませんよね。でも、受験は近づいてくる、勉強しなきゃいけないし、でも身が入らないし、あーあ、というお気持ち、よくわかります。私も求められている原稿の締め切りが来ると、ぎりぎりとそればっかり考えて、さて書き終わって出版社に送ると、気の抜けたような一日を送ってしまいます。かつてはこれが数日続いて、お酒に逃げてみたり、ひたすら寝てみたりしていたのですが、どうも気分が晴れませんし、第一家族に迷惑をかけてしまうので困っていました。要するにリセットができなかったわけですね。
こうした反省から今は、なにか原稿や仕事を一つ終えると、本屋さんに行って、全然関係のない本を見たりして一~二時間ばかり過ごすようにしています。できれば本屋さんは古本屋さんのほうが、時代的な脈絡がつながらない本を見られて、こうした時は特にいいですね。鳥取は古本屋さんが少ないので困りますが、「邯鄲堂(かんたんどう)」(鳥取市吉方)というレトロで素敵な古本屋があり、新刊書でも「定有堂(ていゆうどう)書店」(鳥取市若桜橋)はいろいろ視界を広げてくれる本がうれしい本屋さんです。少し足を延ばして東郷湖畔には「汽水空港(きすいくうこう」(湯梨浜町)という、これまた素敵な古本屋さんがあります。こうした本屋さんをめぐって、本を二~三冊買い求め、美味しい飲み物などと一緒に読んでいると、読んでいるうちに眠くなる(笑)。しばらく眠ってから起きて、それまでの資料を片付けてみると、新しい仕事に少しずつ入れるようになりました。
これは私の例ですが、「リセットのための一日」というのを作ることをおすすめします。その日が終わったらそれまでの部活関係のものはいったん片付けて目の前から遠ざけるのもいいですね。うまくリセットできるようお祈りします。あ、「リセットの一日」をするときは事前に家族に伝えておくことがいいですよ。妙に心配されるのもストレスになりますものね(笑)。
2021.07.01 お悩み相談
【質問】大病が発覚し、どう気持ちを保てばよいでしょうか。

【 質問 】
60代を超え、これまで病気のひとつもしていなかったのですが、大きな病気が見つかりました。今は夫婦で二人暮らしをしていて、子どもたちは都会で仕事をし、家庭を持っています。まだまだ自分は長生きをするものだと思っていたので、突然「死」というものが目の前に姿を現したことに戸惑っています。何かに没頭していると忘れることもあるのですが、不意にそのことを考えてしまい、時には大きな不安に押しつぶされそうになります。前を向かないといけないとは思いつつ、どう向き合っていくのが良いのでしょうか? (60代女性)
【 回答 】
お便りありがとうございます。大きな御病気が見つかられたとのこと、治療もお辛いのではありませんか。毎日、ご不安で、心に重しがのったような御気分ではないかと思います。よく御相談くださいました。直接お話をさせていただきたい気持ちです。書面でのお答えでお許しください。
御相談のお言葉からうかがえますのは、相談者様がとても強い自制心をお持ちの方だろうということです。ご家庭の内でも外でも、いろいろなお役を誠心誠意お勤めでいらっしゃったのではないですか。お嫁さん、お母さん、御夫人、PTAのお役、ご近所付き合い、など、ご家庭でこなす役は多く、さらに働いていらっしゃるならば職場での関係も加わります。そうて築いてこられた役割や立場、重ねた経験がありながらも、突然、想定外の事情が起こることがあります。そのような場合、私たちは混乱しますし、呆然とし、悲嘆のなかに落ち込みます。多分私もそうなります。そのときに「前を向く」というのはとても難しいことですし、必ずしもすぐに必要な道筋ではないような気がします。
相談者様にいま必要なのは、むしろ、丁寧に淹れたお茶一杯を心からおいしいと思えることではないか、と思います。あるいは太陽の光をしみじみ気持ちいいと思えることではないでしょうか。おいしい、気持ちがいい、としみじみ思うことは、「前に向こう」「物事を整理して進もう」と思うことから少し外れます。分別をつけて前進することは、必要と不必要を分けて、不必要を振り切ることです。でも、おいしい、気持ちがいいとしみじみ思うのは、相談者様の身と心が御病気ごと、不安なお気持ちごとそのように感じている、そのことを慈しむことです。そこでは必要と不必要を分けること自体がいらなくなります。無理に前を向こうとせず、おいしいなと思いながら、気持ちがいいなと感じながら、ご自身の体と心をまるごと、御病気ごと、いたわってあげてください。よくやってるな、ありがとう、とご自身の体と心に言ってあげていただきたいと思います。