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2026.07.30 台所手帖
「おてら薬膳」はじめます!

みなさまこんにちは。暑い夏を迎えています。涼を求めて山や川、海に出て一息つきたいですね。ただ木陰に座って涼むときにも、幸せと思うこの頃です。
この原稿は二十四節気七十二候の「小暑」の次候「蓮始開(はすはじめてひらく)」ときに記しています。お寺の裏玄関の蓮の鉢には残念ながら栄養不足なのか花芽はありません。昔は城跡のお堀に蓮が沢山あって、早朝散歩していたら「ぽんっ」という蓮の開く音を聞くことができたとお伺いしています。蓮の開く音、聞いてみたいです。
インスタグラムを始め、お寺の行事や季節の頂いた食材をひっそりお送りしています。和歌山「三宝寺」のともちゃんや西福寺の公望和尚の発信も興味深く、時々リツイートしています。お寺の行事や、「蛇が出た!」とか「御詠歌の様子」「消しゴムハンコの驚きの作品」「お袈裟を縫う会のこと」など普段の様子が手元に届くことも大変嬉しく、天徳寺だけでないお寺の生活がみなさまの日常にお役に立てばいいなと思っています。
私は料理上手で信心深かった祖母、母の影響でお料理が好きです。しかし美味しい料理が上手なわけではありません。美味しい料理は作れる方にお任せして、私は、いまの身体を養う、野菜を使った養生料理をお伝えします。少しでもみなさまの心とカラダの調子が整いますように。
9月から、月に一回行われている坐禅会の日のお昼に「おてら薬膳」としてその月の点心のご提供を計画しています。点心といえば、中華料理かなと思われるかも知れませんが、そうではありません。茶道文化において茶会が催される場合に、お弁当のような軽食が用意される場合があります。その様式には点心、松花堂弁当、茶懐石など、ボリュームや約束に違いがあります。茶道は室町時代から続くおもてなしの神髄ですが、決してお茶、お抹茶を点てるだけではない衣食住をひっくるめた総合文化なのです。茶葉が貴重で薬でもあった当時、空腹に抹茶を頂くのではなくて、よりおいしくお抹茶を頂く為にお料理をおなかに入れておくというのが本意のようです。点心はその中でお弁当より軽やかで、大人数のお茶会に対応することができるスタイルです。
今号は文月の点心。七夕によせて「おなかの調子を整えて身体の中から余分な熱を取り除き潤う献立」でした。作り方の気になるものがありましたら、メッセージください。9月の「おてら薬膳」についての詳細は、HPまたは「天月草木舎」のインスタグラムにてお知らせいたします。お楽しみにお待ちいただけますと幸いです。
【文月の点心】(メニューは左上より時計回り)
・蒸し野菜(椎茸、かぼちゃ、人参、長芋など)
・おから団子とどくだみの天ぷら
・茄子の生姜煮
・金針菜、トマト、枝豆、西瓜の皮
・冬瓜とオクラの味噌すまし汁
・はと麦茶飯
・短冊豆腐
・漬物
2026.03.04 台所手帖
開山忌のこと

ご開山さまはもう400年もの間、このお寺をお守りくださっています。新しく仏さまになられた方をお迎えして、一緒にお守りくださっていると思います。何時からかは判りませんが両湯山のお母さん方と、開山忌の前日のお参り(逮夜)と当日(正当)のお振舞いを整えます。去年と今年は、大本山永平寺さまで20年近く雲水(修行僧)の食事を統括しておられた三好良久老師に来ていただき、天徳寺開山忌の典座和尚さまを務めて頂きました。方丈さんの修業の同期(同安居)である、和歌山の三宝寺さまの奥さまの朋子さんも来てくださいました。とても分かりやすく楽しくインスタグラムで三宝寺様のことをご紹介しています。その中に、天徳寺の開山忌のこともしっかり載せてくださっているのでぜひご覧ください。
逮夜のお弁当は、ピーナッツ豆腐、生姜ご飯、漬物、かき揚げ、煮もの(干し椎茸、大根、人参)炒めなます、柿の白和え、旬菊ともやしのお浸し、リンゴと柿でした。当日は、ほうじ茶で焚く茶飯とつぎ汁、豆味噌で頂く野菜の煮物を約100食ご準備しました。逮夜の準備は一日がかりなので、お昼はまかないにカレーを作ります。今日はその精進カレーをご紹介します。
【開山忌のまかないカレー】
材料:野菜(ジャガイモ、ニンジン、タマネギなど)、しめじなどキノコ類、油あげ、厚揚げ、こんにゃく、ココナッツミルク スパイス(クミン、マスタードシード、カルダモン)→なくてもよい
作り方
①こんにゃくを茹でて、はしなど穴を開けながらちぎる。
②野菜を炒める。(ジャガイモ、ニンジンを入れるなら先に炒めて火を通す)
③スパイスを油で熱して香りを出し、こんにゃく、きのこ類、油揚げを加えて炒める。
④ココナッツミルクと水で水分を調整し厚揚げを入れてルーなどで味を調える。
三好老師は厚揚げを入れるタイミングをとても気にしておられました。水分を入れてから、とのことです。崩れないようにとのご配慮ですね。ぜひトライしてみてください。
2025.08.08 台所手帖
きくらげと金針菜

金針菜と木耳きくらげは、大変相性がよい。炒め物でよく見かける。
薬膳料理、といえば近頃よく耳にする医食同源のいたわり料理だ。食養生のことでもあり、食べることで体調のバランスを整えて心とからだを養う料理のことをさす。
美味しくないけど体に良い料理でしょ、とか苦いの?とか、特別の食材が要る料理なの?という少しややこしい先入観は、随分薄れていると思う。それくらい今の生活には「薬膳」という言葉が浸透してきている。健康でいられる時間は少しでも長い方がいいから、食養生について興味を持つ人も増えているからだろう。
基本的なことは分かりやすくいろんなメディアや本、雑誌が解説してくれている。手軽に生活に取り入れられるし、試してみるとちょっとした不調の原因が判明して身体が軽くなる場合があるだろう。そうすれば気持ちも楽になり、生活することも楽しくなるかも知れない。薬膳は中国の伝統医学の基礎理論がもとになっているが、決して過去の遺産ではなく、それが現代の私たちの生活にも当てはまるという壮大な理論体系だ。縦長の島国の気候風土に根づいた民族でも一様ではない体質を、分析し調整する知恵の集積で「独自の、とか渡来の、」を越えた英知だと思う。今、その知恵に触れることができると考えただけでワクワクする。薬草はずっと人々の病を癒し、心をやすらかにしてきた。山野に実る恵は私たちを生かしてくれた。そう考えると、大地と海、山、空があり、季節があること、それを感じる自分があることに感謝でいっぱいになる。
調子が悪い、と感じる時は症状だけを見るのではなく、その症状のもと、原因に向き合うことが大切。きれいな空を見て、美味しい空気を吸って、湧き出る水を飲んでほしい。もちろん、季節を正しく楽しく凌ぐ必要もある。少し気を付けるだけで心と體が楽になる知恵があるなら、みなさんと共有してゆきたいと思う。
日本の発酵文化もしっかり見直されていて、若くて子育て奮闘中のママ達の世間話に「麹が好きで、塩こうじや醤油麹を自分で仕込んで使っている、甘酒も自分でつくる」と聞いて、はじけるような若さと美しさより、その食に対しての意識の高さにびっくりしたことがある。とても嬉しいと思った。街中で暮らす孫が、おばあちゃんの料理が美味しいといって昔献立を好んで食べに来る、という話も大好きなエピソードだ。私も、今は昔献立を習うことが楽しくて仕方がない。たいてい旬の野菜をどう保存するか、が料理のもとになっているように思う。
ニキビが出始めた若い子が食生活を見直し、自分の身体に意識が向いて自分が体に取り込む物の成分表示を気にし始めるとしたら、それも素晴らしいと思った。自分の心と體を知ることができたらよりよく過ごすことができる。健康、万全でいることはとてもありがたいこと。
結局「食べたもの」で「体はつくられる」のだ。ジャンクフードがダメというのではない。ちょっと減らして、そのぶんの予算でいい油を調達してほしい。少しの塩を振った野菜を炒めるだけで素晴らしい一皿ができるから。
できれば大手の油メーカのものではなく、単価は高くても丁寧に絞られたなたね油やこめ油、ごま油を使ってみてほしい。かるく熱して、ゆでたきくらげと金針菜を炒めてみよう。金針菜でなくてもアスパラやきのこでもよい。アスパラは食感が似ている。金針菜は乾燥のものが割と手軽に手に入るので水に戻して茹でて使うとよい。私は住空間の横の小さな畑で金針菜を育てて何年かになるが、それなりの収量を得られるようになった。やっと細々とお裾分けができるようになった。薬膳の師匠にノカンゾウとヤブカンゾウ、どちらでも食べられるのかをお伺いしてみたら、どちらも食用になるとのことだった。よく見てみると、一重のノカンゾウも八重のヤブカンゾウも季節になるとあちこちに咲いている。しかし、ちゃんと茹でて水に晒さないとおなかを下す可能性があるので注意は必要だ。食材の薬効を活用する場合と、不要に摂ってしまわないように抜く(アク抜きともいう)「その技術」も、また「料理」ともいうのかもしれないなぁと、ちょっと思った。
作り方
1.乾燥木耳は水で戻し刻む。生木耳ならそのまま刻んで茹でる。
2.金針菜はゆでて水にさらし、炒めて、塩コショウを振る。
あとはご飯と味噌汁、塩もみキャベツと粉ふき芋、とか、焼き油揚げか豆腐、梅干か佃煮干し椎茸、塩もみ小松菜などがあればいい。
☆木耳(きくらげ)について
「きくらげ」には「きくらげ」と「あらげきくらげ」がある。
「きくらげ」=「黒きくらげ」
「あらげきくらげ」=「裏白きくらげ」
大型で裏側が白い毛で覆われている。分類学名は明らかに違う。流通しているのはあらげきくらげが多いようだ。黒木耳は本来珍しいのかもしれない、ということを密かに記しておこう。
効能は
補益気血 滋補強壮 滋補肝腎 潤肺止咳
清熱(涼血止血) 活血(活血散瘀) 解毒(抗癌) 瀉下(潤燥利腸)
まとめて簡単にいえば
ミネラルが多いので血液を増やし、気を補い肺を潤す。空咳や口の渇き乾燥肌の改善にも有効。
すばらしい薬効のある食材。腎と肝を補う。どの年代にも必要。ビタミンDも豊富背が伸びる。
☆金針菜について
ススキノ科ワスレ草属
中国名 金針菜、黄花菜 萱草花 安神菜 忘憂草
和名 ノカンゾウ ヤブカンゾウ ユウスゲ 山菜の萱草。効能は「萱草嫩苗」のこと
日本では山菜として若苗、若芽を食用
分類学名は同じだか、種類がいくつかあり一重か八重か日本国内でもノカンゾウとヤブカンゾウの違いがある。どちらも食してみたがあまり違いは分からなかった。
効能は
清熱 清熱解毒 清熱利湿
理気(解鬱) 補血
まとめて簡単にいえば
体のほてりをとり、気、血を補い体内を巡らせる力がある。鉄分はほうれん草の数倍(20倍?!)
*Instagramをはじめた。まだ、あと1年は準備期間中。
*スタッフさんと試行錯誤しながら山の麓に畑を始めた。畑の師匠が沢山いてくださるのが心強い。
*薬膳精進料理のご提供は随時受付中。
*季節の養生講座を試験的に開催。鍼灸師の先生と協力して運営中。
次回は「秋の土用のセルフ灸 (仮)」
お問い合わせはHP、天月草木舎のInstagramよりお待ちしています。
皆さんの心と體を整えるお力添えになれば幸いです。
2024.10.25 台所手帖
失敗は成功のもと

池坊のお華の先生のお宅で、少々季節外れの風船カズラが花をつけて揺れていました。とても可憐で儚げながら小さな白い花と緑の繊細な風船が印象的でついつい目にすると顔がほころびます。そういう草花の存在に幸せを感じます。どなたでも、笑顔で対応してくださるとうれしいなと思う、それに近いと感じた今日この頃です。急に朝晩冷え込みあっという間に冬かと思えば日中は夏日。着衣に迷っております。
以前に教えて頂いた赤ずいきの汁を作りましょうと、里芋人参大根などを煮込んで、うっかり赤ずいきを刻んで入れてしまいました。途中からおっと、と気づいて皮をむき刻んで(本当は湯通しして絞るなあ、、)と思いながらなんとかなるか、と料理を続行してしまいました。味噌を溶いていただいていると、「なんだか舌がピリピリする!」と食べた皆がいいだしました。実際、これはシュウ酸カルシウムの仕業、赤ずいきのあく抜きをしっかりしなかったことが原因でした。シュウ酸カルシウムの結晶は四角だか三角だかに尖っていて、そのとんがりが口内を刺激していたのでした。料理はやはり、必要な手順をしっかり踏まえなければならない、ということですね。そのあと、ひと鍋の汁をどうしたかというと、いったんピリピリのアクの溶け込んだ汁を洗い流して、新しく出汁を足したのでした。久々の大失敗でした。
〈きくらげL I F E〉
9月に、天徳寺典座寮にて撮影協力をさせていただきました。菌塵研究所のスタッフさんのもえちゃんとは、京都で入門した薬膳教室の先輩後輩、いつか何かを一緒にしたいね!といっていました。だんご汁を一緒に作ったり味噌づくりの会に誘ってもらったり、薬膳料理の会に誘ってくれたり、松露やきのこについていろんなことを教えてくれるきのこの達人です。
1年分の季節を1日で撮るという、プロの撮影現場に真剣勝負。料理の出来栄えは、さて、Instagramにてお楽しみに。
@kikurage_life
撮影は道環の写真でおなじみの僕ら、の藤田さん。日々是修行、お料理の研究、修行します。
2024.08.10 台所手帖
夏のごはん

みなさまいかがお過ごしですか?山河草木のうつろいは、正直ですね。芽吹いた緑があっという間に濃くなって、お寺の裏の山も青々と茂っています。あまりに気温の高い日には木々の枝葉が裏返って逆立ち、白色系茶色緑に見えるような時があります。雨風の被害が広がらず、動物と人とのバランスが保たれますように。
地球環境を心配する当の私はといえば、規則正しく過ごしたいのに仕事の段取りをうまく組めずに悪戦苦闘しています。そうすると身体が定期的に悲鳴を上げます。心身ともに滞りをなくして、気血の流れがうまく巡るように暮らしたいものです。
元気が足りない時には、季節の野菜ご飯がいいですね。空豆、インゲン豆美味しく頂きました。いまは、胡瓜、トマト、甘長唐辛子、ピーマン、西瓜、そしてトウモロコシの出番です。皆さんは、トウモロコシはどのように召し上がりますか?塩ゆでが多いかも知れませんね。蒸し器で蒸したり、グリルで焼いたり、天ぷらなどという場合もあると思います。手の込んだところでは、コーンスープでしょうか。子供の頃は祖母や母が作ってくれるコーンスープが楽しみでした。トウモロコシの皮を剥くお手伝いをしていましたが、それがとても大変な作業だったような記憶があります。けれど、それは自分が小さかったから。トウモロコシを剥く時は「あの頃」に一瞬戻れる楽しいひと時です。近頃は、茶色くなったトウモロコシのヒゲの先っちょをハサミでちょきんと切って皮を剥きながら、きれいな翡翠色のひげをつかんで纏めて引っ張り、そのひげも大切に使います。ひげは玉米鬚(ぎょくべいしゅ)とか南蛮毛という漢方薬です。車前草(オオバコ)や冬瓜皮などと一緒に煎じて、むくみ取りに使われます。芯は「玉米軸」といい、簡単にいえば、どれも身体の熱を冷ましたり余分な水分を出したりする働きがあるのです。
トウモロコシはもともとは南米原産で、栽培の歴史は、マヤ、アステカ古代文明にまで遡れるそうです。15世紀末にコロンブスによってヨーロッパに伝わり、ポルトガル人によってジャワに導入、16世紀ごろ中国に伝わり同時に日本にも伝えられたという説が有力です。「トウモロコシ」の品種は様々で甘みの少ない乾燥させて穀物として利用するものと、乾燥させずに生を加熱して食べる甘みの強いものがあります。日本では「甜質型」(スイートコーン)が多く栽培されていますが、中国では甘みのない「硬粒種」も製粉してマントウや粥にするそうです。トウモロコシ粉に山薬(山芋)を3:2でお粥にすると玉米山薬粥。話が逸れましたが、トウモロコシご飯をご紹介します。
【トウモロコシご飯の作り方】
トウモロコシ1本、給水させたお米3合、塩小さじ1を鍋に入れ炊きます。
炊き上がったらトウモロコシを芯から外し混ぜます。大葉青紫蘇があれば刻んで混ぜ込みます。
トマトの味噌汁とトウモロコシご飯に胡瓜の糠漬け、枇杷。是非やってみてください。
毎日のご飯で体調を整えることが出来たら何よりですね。ご無事に夏を乗り切りましょう。