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2023.11.25 台所手帖

白木耳の糖水「銀耳梨蓮子枸杞」ぎんじなしれんしくことうすい

白木耳の糖水「銀耳梨蓮子枸杞」ぎんじなしれんしくことうすい

白木耳しろきくらげの「銀耳梨蓮子枸杞糖水」ぎんじ なし れんし くこ とうすい

寺市で、白木耳と梨、蓮の実、枸杞入りのデザートをご紹介しました。 白木耳は中国名を銀耳(ぎんじ)といい、もともと天然のものは産量が少なく貴重な食材でした。 清朝以降に宮中で知られるようになったそうですが、1980年代には栽培も可能になり、手に入りやすくなりました。白木耳は香港中心の広東料理では食後に頂く甘くて温かいスープそして頂くことが多いようです。そのスープには種類も豆類や穀類などがあり、いわゆる甘い汁物の総称が糖水。山西の人が酢を飲んだり、湖南の人が辛いものを食べたりするのと同じくらい広東の人は糖水を食べるそうです。つまり糖水は四季を通して生活の一部で、日本でいうならば、ぜんざいやおしるこみたいなものなのかもしれませんね。

 最近は日本でもよく、アンチエイジングの美肌食材として白木耳を使った献立が紹介されています。水溶性食物繊維が豊富で、体内の必要な水分を増やし、肌にも潤いをもたらす作用が高い!(←ここが大切)きのこなのに寒天やゼリーのように変身する不思議な食材です。水戻ししてさっとゆでたくらいでも食べられるのですが、消化吸収、効果を得るならば柔らかく煮るべし、だそうで、高齢でも現役で治療に携わる中医師の先生方にとっても欠かせないのだとか。中国の家庭に留学されていた薬膳の先生が、乾燥で喉の不調が出た時に師匠の家庭で教わったという白木耳と梨を煮込むおやつのアレンジが、今回ご紹介する糖水です。最初のうちは、なかなかきくらげをトロトロに煮ることができず、随分と苦労したのですが「圧力鍋で煮てもいいよ!もう少し時間をかけて煮てみてごらん」という先生からの軽やかなアドバイスのお陰で上手に作れるようになりました。

 お味はどうか、というと白木耳そのものは淡泊です。味も香りもあるのかないのか?ない?かも知れない。なので、氷砂糖で甘みを足し柑橘類で味を調えます。カラカラで黄色い湯葉みたいな白木耳は、水で20分も戻せば真っ白なプルプルの、かわいらしいともいえるような物体に変身します。そこからじっくり時間をかけて(2~3時間、圧力鍋で1時間)煮るとトロトロになります。その間に梨を切り同じく氷砂糖で煮ておきます。鳥取の梨はとても美味しく、丹精込めて育てられた梨に出会えるこの季節は待ち遠しいものです。梨はそのまま頂くだけではなく、すりおろしたり、調味料をまぜて料理につかったり。秋から冬にかけては、温かい甘酒とすりおろし梨をお好みであわせる、という鳥取的発酵薬膳飲料が気に入っています。梨の一番好きな頂き方は「切ってそのまま頂く梨に勝るものなし」なのですけれども、ほっと一息つきたいときのネルギーチャージドリンクとしての
HOT梨甘酒は最優秀賞ノミネート作品。

 蓮の実も、最近は手に入りやすいので、乾燥蓮の実ならば水戻しして同じように軟らかく煮て、氷砂糖で下味を含ませるとよいおやつになります。生ならば、蓮の芯まで美味しい!!蓮の実はおなかの調子を整えたり心のバランスを整え不眠などを改善する効果が期待される食材で、栗やお芋をあわせたような味がします。潰して蓮の実あんにしてもよいし、スープやお粥に入れても美味しい。

 白木耳に梨だけで頂いても、肺を潤し身体に潤いを与える食材なので充分効果アリ、なのですが今回は枸杞(くこ)と龍眼(りゅうがん)も一緒にご紹介。枸杞はゴジベリー。「日本にも自生のくこがあるよ」と中国は吉林省からお嫁に来ている知人に教えてもらいました。(最近餃子の皮づくりも習い、だんご汁→バックナンバー参照 だんご作りの要領と同じと知る)1日片手にひと盛り、約 20g 位食べ続ければドライアイや目の疲れを軽減したり老化症状を抑えることができるということで、自ら実践してみたら、リーディングクラス(老眼鏡)がなくても過ごせるようになりました。少しずつでも食べ続けることが肝心のようです。

 龍眼という名のドライフルーツ、聞いたことがありますか?日本では最南端の鹿児島の植物園でしか結実しないという果実です。血を補いおなかをあたためつつ心を穏やかに保つ力を持つ食材で、ライチのような果物なのですが水戻しすると、大きな目玉のように見えなくもない。龍の眼、なるほどそんなイメージだわ、と納得できてしまうような果物です。龍眼と棗(なつめ)は元気の気を補うためによく使う薬膳食材で、棗は食材というより茶道のお道具として名が通っていますね。薄茶(抹茶)を入れる塗りのいれものを「おなつめ」といいます。茶道にはなくてはならないお道具なのに、今ではめったに生の棗を食べることはない。伝統文化入りして保たれてはいるけれど、なじみのない食材なのでは?と長らく不思議に思っていたのでした。ところが薬膳にであってからは棗や龍眼は元気を補う重要な食材で、お隣の韓国や中国ではとてもよく食されている果実だと知るのです。長年の疑問「よく使われるお道具に例えられる果実なら、棗は利休さまの生きた時代にも重宝されていたのではないか?」への答えが見つかったというわけです。大事に頂かれていたことでしょう。時間を見つけて茶会記など資料を調べてみなければなりません。茶事の献立に柿はよく記されていた記憶にありますが、はて。棗はあっただろうか。
 実際、お檀家さまたちから棗も桑の実も「小さい頃には、ようおやつにしとったわあ~!懐かしい~!」との声をききます。なるほど。だからこそお元気で過ごせているのね!季節の野菜、果物をそのときどきに楽しめる鳥取生活は本当に幸せなものなのです。
ありがとう、鳥取。

いつか天然の白木耳で糖水を作ってみたいな、と願いながら今日はこの辺で。

2023.03.26 台所手帖

大分の郷土料理 だんご汁とやせうま

大分の郷土料理 だんご汁とやせうま

寒い間に味噌を仕込もう!
ホームぺージやフェイスブックでお声掛けして、「お寺で一緒に味噌づくりをしませんか?」お手伝いしてくださる方を募ろう!と思っていたのですが、あれこれと悩んでいるうちに寒仕込みの時期を逃してしまいました。どんなふうにしようか、ああでもない、こうでもない、と足踏みしていたら天のお導き(?)NPOの団体さんとご縁が繋がり、「生産者の方々と大豆を植えるところから参加できる味噌づくり」の会に参加させて頂くことができました。今年はリサーチの年、ということにしようかな。

 なるほど、大豆を植えるところからからの味噌づくり、これは幸せ。自然農というのでしょうか、鹿や猪とわけっこしながら、人間の分、みんなの分を収穫させてもらって、麹と塩と混ぜて味噌になる大豆、それを植えて育てるお手伝いをさせて頂けるのかあ、すごいことだなあ、と思いました。ホカホカの温かい大豆を一粒味見したら、味見が止まらなくなりそうなくらい美味しかったのです。「いかん、いかん、今から味噌づくり」と、大豆の味見をしたい気持ちに蓋をして、作業に取り掛かったのでした。懐かしい仲間との再会もあって話が弾み、おいしくなること間違いない味噌を仕込んでまいりました。今期はぜひ私も大豆を植えるお手伝いをしたいと思っています。私も食の循環の大きなサイクルの(右?左?端っこ)一端に参加できたなあ、と感動しながら帰路に就きました。仕事となると大変だとは思いますが、土と共に生きてゆけることは幸せなこと。手をかけて、育てて戻って来る。鳥取は土が沢山あるので、自宅で野菜を作ってる方も多く、お裾分けを頂くことが典座寮の喜びです。
 ひと匙の味噌、大豆と麹と塩が美味しくなるまでの時間を、大豆を土に植えるところ、麹になるお米を植える、麹の分離から考えてみるいいチャンスでした。大切だなあ、としみじみ思いました。

 さて、天徳寺は何ができるか。典座寮は考えます。「一緒に坐禅をして、精進料理を頂きませんか?」味噌の会の若い農園主さん、精進料理にご興味があるとの嬉しいお言葉。今しばらくお時間を頂きまして検討したいと思います。

 今日は、先の味噌づくりに参加して頂いてきた昨年仕込みのお味噌と頂いたお野菜で、大分の郷土料理、だんご汁を作ります。味噌を使ったスペシャル料理です。とても手軽に楽しく仕込めて、美味しいので作ってみていただきたいです。

 だんごは、小麦粉をボウルに200gくらい入れ、少しの塩と水を適量加えてこねます。耳たぶ位の柔らかさになるようにこねたら20分くらい濡れ布巾をかけてねかせます。その間に味噌汁を仕立てます。そして同時に先ほど寝かせておいた生地をピンポン玉くらいにちぎり、粘土のヘビを作るように麺状に両手でのばします(肩幅くらいに伸びれば上出来)そのだんごを味噌汁に入れ、火が通ったらだんご汁の出来上がりです。

 お湯を沸かし、同じ要領で伸ばした麺を入れてゆで、きなこ(砂糖と少しの塩)にまぶすと「やせうま」というおやつになります。鳥取の大山小麦や地粉、安心な小麦で作ってみて頂けると嬉しいです。

2023.02.27 台所手帖

季節の仕込みもの 柿酢

季節の仕込みもの 柿酢

柿酢を仕込みました。11月くらいから、熟した柿を、瓶に入れて発酵熟成させています。熱湯で消毒したガラスの保存瓶に、洗わずへたを取った柿を入れます。皮一枚で内と外の境界を保っているような柿を瓶に入れるだけ。さらしなど布で空気が通るように蓋をして、様子を見ます。

最初のうちは発酵を促すために、つついたり、揺すったりして混ぜます。さらしを外すとふんわり柿の香りが漂っていたのに、ある時から炭酸ガスがぽこぽこと出てきて、かすかにアルコールのような、不思議な香りに変わります。少し不安になりますが、慌てない。収まってくると酸っぱい香りになり酢酸発酵が進んでいるな、と判るようになります。見守りを継続し、20日目くらいから使うことができるようになります。

上澄みを味見すると、果実由来の柔らかな甘みを感じられる香りのよいお酢になっていました。酢の物にはそのまま使えます。酢醤油にしてもよいし、塩もみした野菜のつけ床にしてもよいです。マリネ液や隠し味に酢酸菌の力をかりています。
 
柿酢は日本で古くから仕込まれている果実酢です。4世紀頃中国から酒の伝来と前後して和泉の国でつくられるようになった日本最古の酢「いずみす」よりも前から、作られ、使われていたのではないのか?と調べ中です。ご存知の方があったら教えてください。

あと、10年ものの柿酢は薬になると聞き、とても腑に落ち素直に納得したのでした。味噌もおなじ?!(10年経過した味噌や梅干しは大変貴重なのだと母は常々言っています)熟成する過程で微生物が働き、酵素によって分解されます。目に見えない微生物による発酵のたまものが体内に入ると、吸収されやすくすぐに働くことができるなど、腸の研究も進んでいるようです。

微生物、菌は熱を加えれば死滅してしまいます。しかし重要なのは、食べもののなかに菌自体が生きているかどうか、よりも、菌が生成した酵素やミネラル、栄養素がいかに体内に取り込まれるか、ということが大切。そこで、みなさまにお勧めしたいのは、少しの量でも味噌づくり、酢、醤油造りに挑戦してみること(醤油も作れます)ですが、そうもゆかない場合、選んでみてください。調味料を。静置発酵の酢、天日で乾かした塩、本醸造の醤油、砂糖は原料糖、みりんは本格本みりん、です。どんなに頑張って自分で調味料を仕込んでみても、やはり、歴史と伝統を守る蔵の調味料は違います。なので、つくるもよし、選ぶも良しです。なぜならそれらの調味料は、おいしいだけでなく、加熱によって微生物が働きを止めてもより確実にはたらいてくれるはずなのです。どのくらいになるだろうか、私は醤油職人さんの100㎖の醤油で、全国の旅をしています。おいしいお醤油と、柿酢があれば料理の腕があがったかと勘違いするくらい瞬間的にお味が決まるのです!

2022.01.25 台所手帖

金柑

金柑

いつの間にか朝を迎えているように、新しい年を迎えることができそうです。ありがたいことだと改めて感じます。いつも難なく会える誰かと会えたり、会話を交わしたりすることが、実は毎回、一瞬ごとに最後になるのでないかと、根拠もなく思う今日この頃です。

 天徳寺は歴史的に長らく修行道場でした。400年以上もその歴史を遡ることができます。今でも、沢山の和尚様方が辨道(修行)のために出入りされます。そして、お寺を支えてくださる檀家の皆様と同じようにこのお寺は和尚様方によって保たれていることは、度々ご紹介しております。例えば、台所の責任者として一つの修業期間や、行持(ぎょうじ)を取り仕切ってくださるお役を典座和尚様といいますが、摂心会、開山忌、授戒会や眼蔵会の時とそれぞれに典座寮(台所チーム)が組まれるのです。そんな中で、用呂の祥雲寺様はつい数年前までお一人で30年天徳寺の開山忌を取りまとめてくださっていました。典座寮での教えを大切にしてゆきたいと思います。

先般、方丈さんの同安夏(修行の同期)の和尚さんが京都の亀岡から数日滞在されていました。何気ない日常会話で私の心に響いたのは「精進料理」という言葉。「自分は生活の中で頂いた食材や料理はなんでも精進料理だと思っている」と。覚悟のある言葉だと思いました。野菜だけの料理が精進料理、ではない、ということですね。気持ちのこもった「どうぞ」に対してそれを頂く覚悟。「例え、それがどんな食材、料理でも」「精進料理」そう言い切られるお姿がありがたく、ご紹介したく思いました。「あなたのために走り回って一生懸命用意しました。」これが「ご馳走」の意味ですよね。精進料理とは、命を繋ぐ「どうぞ」「いただきます」のこと。ご馳走と同じ。しかし、その食材や料理の中に、相手に、自分に、仏さまがあるのだ。そう感じた尊い瞬間がありました。
 

 季節の手しごとは、金柑を甘露煮。簡単にできるので是非お試しください。金柑は気の巡りを整え、体を温めます。喉に違和感があったり咳が出るときなどに有効です。

金柑の甘露煮の作り方

〈作りやすい分量〉
金柑800グラムに対して、
きび砂糖約400グラム弱を用意します。

〈作り方〉
金柑を洗って、縦もしくは横に包丁の角を使って切り目を入れます。2、3か所に切り目を入れたら、私の祖母は水に漬けて上下か左右に何度か押さえて種を出していました。鍋に金柑を入れ、ひたひたに水を張り、沸騰させます。一度茹でこぼして水を取り替えて一晩漬けおきます。次の日にゆっくり火を入れます。砂糖は、数回に分けて入れます。煮汁はお湯で割ったり、炭酸で割ったり、と活用します。苦味と酸味と甘味が調和していてなくてはならない季節のしごとです。

2021.07.01 台所手帖

夏のお茶を楽しむ

夏のお茶を楽しむ

皆様こんにちは!

 ちょっと一息つくときには、何を召し上がっていますか?古の昔には、一部の人しか口に入らなかった、お茶も、紅茶もコーヒーも今は、誰もが楽しむことができます。自分の好みや体調に応じて選ぶことができる、幸せな時代です。

 季節に応じて、飲み物や食べ物が体調管理に役に立つとしたらよいと思いませんか?
夏、暑い、と思うとついつい冷たいものを口に運んでしまいますね。私は最近、そのせいで胃腸が弱ってしまいました。これではいけないと、日常を見直す今日この頃です。

 今回は、もともと体を冷やす作用のある茶葉の水出し、夏にこそお勧めの頂き方をご紹介したいと思います。

 典座寮(お寺の台所)には扇風機あるのみ。盛夏には、じっとしていても汗が滴る時期があります。そんな時には、西瓜の皮や冬瓜の皮を干してお茶にして飲んでみたり、炒った小豆や黒豆のお茶を煮出してみたり、と体内から整えてゆきます。(これらは、改めて記します)そんな中でも、冷水で淹れた煎茶は格別です。氷でじっくり抽出することもあります。氷をはやく溶かすために、少しの呼び水(50ccくらい)を加えます。氷が溶けるころには、まろやかなお茶ができています。普段使っているお茶を、違う温度で淹れてみてください。違ったあじわいを楽しむことができます。一煎目、しっかり濾しましょう。二煎目、さてどう頂きましょうか。しっかり開いた茶葉にはまだ旨みがしっかり残っています。続いて水出しでも、お湯で淹れても良し。

 玉露など、茶葉を冷水で淹れた後、開いた茶葉をポン酢やお醤油で頂いてみてください。おいしいです。通常でも茶殻には7割もの栄養素が残っているそうです。おひたしにすることもあるし、佃煮にもなります。お茶の葉のチャーハンや、雑炊を出すお店もあるくらいです。お湯に溶け出さない不溶性の食物繊維も摂取できるので、一挙両得ですね。方丈さんの同安吾(修行の同期)の和尚様が静岡におられて、毎年お茶を送ってくださいます。体調管理のために、とのことです。
ありがたいです。

 皆さんご存じだとは思いますが、日本茶はお湯の温度によって抽出される成分が変わります。冷水から30度くらいの低い温度ではアミノ酸が多く溶けだし甘みが感じられます。風邪予防になるのは40度以上、中間から高温のお湯でいれたお茶です。カテキンがお湯に溶け出し特有の渋みが出てきます。さらに高温でいれるとカテキンだけでなくカフェインも溶け出し渋み苦みが増します。くれぐれも夜更けに渋くて苦くて濃いお茶を飲むなんてことはなさいませんように。(体温くらいの白湯がよいですね。)

◉お茶を冷水で淹れてみよう!
(作り方)
約1リットルの水に茶葉6gから10gくらいを入れ、20分から3時間くらい冷やします。私は、夜寝る前に茶葉と水の入ったボトルを冷蔵庫に入れておいて翌朝濾していただきます。宵越しのお茶は飲むなと言われていますが、これは、急須に残った使いさしの茶葉を次の日に使わないように、ということで、茶葉に含まれるカテキン、抗菌作用のあるタンニンが溶け出た後、茶葉のたんぱく質の質が落ちることを指摘する言葉だそうです。丁寧に濾した茶葉は青々としています。茶葉を粉砕して、茶葉ごといただくというのもお勧めです。