読む

2021.07.01 お寺のあれこれ

お仏壇のお線香は何本たてるのが本当なの?

お仏壇のお線香は何本たてるのが本当なの?

お檀家さんからよく「お仏壇のお線香は何本立てるのですか?」というご質問があります。「1本、2本、3本と立てられる人によって違っているので、どれが正解か分からない」とお尋ねです。お答えすれば、実はどれも正解なのです。なぜそのように言えるのかご説明しましょう。

 まず、お線香1本に火をつけ、お気持ちを込めて香炉(お線香立て)にお立てして、合掌お祈りするというのが大原則です。だから1本が正解。しかし、お線香が短くて、もっとお香の煙を足したいとお考えになると、もう1本をくっつけて2本立てるという場合もあります。だから2本も正解。問題は3本立てる場合です。3本立てるのは、大抵はお坊さんです。夏の棚経などでお仏壇にお参りされているときに、お坊さんはお線香をたいがい3本、ちょうど三角形になるように香炉に立てます。これを見て「ああ、3本あげるんだ」と思われるお檀家さんもいらっしゃいますが、これはお坊さん特有のやり方です。

 お坊さんはお参りの前にお寺でもお仏壇でも準備をします。まず掃除をし、位置を整え、お花とお水を新鮮に保ち、お膳を整え、お灯明を灯します。これはみなさんもされると思いますが、お坊さんはさらに、準備が整ったしるしとしてお線香を香炉の端から指一本分離し、左右に1本ずつ立てます。これを「迎え線香」といいます。お仏壇でのお参りでは、すでに掃除などの準備がお檀家さんの家々でなされていますので、お坊さんは「では準備が整いましたね」という意味でお線香を香炉の両端に2本立て、そこから自分の念を込めたお線香を1本中央にあげます。その意味で3本のお線香も正解なのですが、これはお坊さん特有のやり方で、一般檀家さんは1本のお線香を大事にあげられるだけで十分、と覚えておいてくださればよいと思います。

 そしてもうひとつ、お寺の抹香でのご焼香の仕方と回数について。ご焼香の仕方は、抹香を右手親指と人差し指でつまんで額まで持ち上げ、心を込めて、香炉の中の炭に落とし、燃やす。これがご焼香のメインです。本来ならこれだけで十分なのですが、お香が炭にうまくあたらず煙が上がらない場合や、煙の量が少ない場合があるので、もう1回予備としてお香を焚きます。(2回目の焼香は、抹香を額まで持ち上げない。)1回目の焼香を「主香(しゅこう)」、「2回目を従香(じゅうこう)」と呼びます。3回のご焼香をされる方もいらっしゃいますが、私(住職)は、ご焼香は2回で十分だと教わりました。そしてご焼香をされたら、必ずお香を手向ける相手に合掌してお祈りしましょう。お香を焚いて合掌礼拝する、というところまでがご焼香です。

2021.07.01 住職のおすすめ本

「子どもの話にどんな返事をしてますか?」 草思社

「子どもの話にどんな返事をしてますか?」 草思社

「子どもの話にどんな返事をしてますか?」 草思社
ハイム・G・ギノット 菅 靖彦訳

子育てはつくづく難しい。子どもは、こちらが思うようには決してなってはくれず、すねるし、怒るし、泣くし、あばれる。どうやってコントロールしようかと考える親の思いを常に裏切ってゆく。今、問題になっている多くの虐待事件や、親への暴力事件は、そもそもこうした親子間の日々のすれちがいが積み重なってエスカレートしてきたもののように思える。それは、親と子どもの双方に大きな負担を強いる。ではそのような、双方に不幸をもたらすすれ違いが起こらないようにするにはどうすればよいか。本書を読んで、わたしは大げさでなく、子どもへの言葉の使い方が180度変わった。

 本書は「はじめに」で、次のように言う。「子どもを傷つけるような対応の仕方をするのは底意地の悪い親だけだとわたしたちは思いがちである。だが、不幸なことに、そうではない。愛情豊かで、善意の心をもった親も、責める、辱める、非難する、あざける、脅す、金品で買収する、レッテルを貼る、罰する、説教する、道徳をおしつける、ということをひんぱんにしている。なぜだろう?たいていの親は、言葉がもつ破壊的な力に気づいていないからだ。親たちは、気づくと、自分が親から言われたことを子どもたちに言っている。自分の嫌いな口調で、言うつもりのなかったことを言っているのだ。

そのようなコミュニケーションの悲劇は、思いやりに欠けているからではなく、理解不足に起因していることが多い。親は子どもたちとのかかわりで、特別なコミュニケーションのスキルを必要とする」。この箇所を読んで、ギクッとしない親は、多分いないだろう。それぞれ多かれ少なかれ思い当たるところがあるからだ。

では、このような悲劇に陥らないコミュニケーションのスキルを、どのように身につければよいか。親たちはともすれば、子どものふるまいとともに、その気持ちも批判し、制限してしまおうとする。しかし、私たちもそうだが、子どもの気持ちは、外から強制的に変えられるようなものではないのだ。ふるまいと共に気持ちまで批判すれば、子どもたちは「自分はわかってもらえていない」と思うだけだろう。だから、気持ちは全面的に受け止め、行為だけはその場面に応じて制限をかける、という、寛容さと冷静さとが親には必要なのだ。さらに、それは抽象的な机上の教育論としてではなく、子どもに言葉をかけるときに、カッとなって批判したり、詰問したり、皮肉を言ったりことのかわりに、気持ちを全面的に受け止める言葉と、彼らの行為を明確に制限する言葉を発するようにするという、実践の問題としてあるのである。ここにスキルが必要なのである。

 本書には、実際の場面における話し方の実例が多数挙げられ、読むことで自然とスキルが上げられるように工夫されている。子どもに対するこのコミュニケーションのスキルは、どのような世代の人々に対しても有効であり、私たちは本書を読むことによって、いわば対人関係の基礎スキルを学ぶことができるわけなのだ。育児に悩むご家庭のみならず、あらゆる世代に強くおすすめする本である。