読む

2026.03.04 台所手帖

開山忌のこと

開山忌のこと

 ご開山さまはもう400年もの間、このお寺をお守りくださっています。新しく仏さまになられた方をお迎えして、一緒にお守りくださっていると思います。何時からかは判りませんが両湯山のお母さん方と、開山忌の前日のお参り(逮夜)と当日(正当)のお振舞いを整えます。去年と今年は、大本山永平寺さまで20年近く雲水(修行僧)の食事を統括しておられた三好良久老師に来ていただき、天徳寺開山忌の典座和尚さまを務めて頂きました。方丈さんの修業の同期(同安居)である、和歌山の三宝寺さまの奥さまの朋子さんも来てくださいました。とても分かりやすく楽しくインスタグラムで三宝寺様のことをご紹介しています。その中に、天徳寺の開山忌のこともしっかり載せてくださっているのでぜひご覧ください。
 逮夜のお弁当は、ピーナッツ豆腐、生姜ご飯、漬物、かき揚げ、煮もの(干し椎茸、大根、人参)炒めなます、柿の白和え、旬菊ともやしのお浸し、リンゴと柿でした。当日は、ほうじ茶で焚く茶飯とつぎ汁、豆味噌で頂く野菜の煮物を約100食ご準備しました。逮夜の準備は一日がかりなので、お昼はまかないにカレーを作ります。今日はその精進カレーをご紹介します。

【開山忌のまかないカレー】
材料:野菜(ジャガイモ、ニンジン、タマネギなど)、しめじなどキノコ類、油あげ、厚揚げ、こんにゃく、ココナッツミルク スパイス(クミン、マスタードシード、カルダモン)→なくてもよい

 作り方
   ①こんにゃくを茹でて、はしなど穴を開けながらちぎる。
   ②野菜を炒める。(ジャガイモ、ニンジンを入れるなら先に炒めて火を通す)
   ③スパイスを油で熱して香りを出し、こんにゃく、きのこ類、油揚げを加えて炒める。
   ④ココナッツミルクと水で水分を調整し厚揚げを入れてルーなどで味を調える。

三好老師は厚揚げを入れるタイミングをとても気にしておられました。水分を入れてから、とのことです。崩れないようにとのご配慮ですね。ぜひトライしてみてください。

2026.03.04 お悩み相談

【質問】地球上の命のために自分の命をいかすとはどういうことなのでしょうか?

【質問】
昨年の寺市で、「人間はどうして誕生したのだろう、何のために?」という問いに対して、それは結局考えてもわからない問いであって、そのことで頭を悩ますより、与えられたこの命をどういかせるか、それを考えるのがいいと教えていただきました。とても納得できて、今でもその言葉を日常で思い返すことがよくあります。
 この地球上の命の為に、自分の命をいかすとはどういうことなのか、もう少し具体的に教えていただきたいです。

【回答】
ご質問ありがとうございます。前回の寺市も来ていただいたとのことで、感謝いたします。「地球上の命のために、自分の命をいかす」とは、とても大きな課題ですが、現代の世界の状況を見ても、喫緊の問題であると思います。仏教ではどう考えるのか、少し考えてみたいと思います。
 お聞きになったことがおありだと思いますが、釈尊の基本的な教えの一つに、「諸行無常」という教えがあります。これは、すべてのものが変化していて、永遠なるものはない、という教えですが、ともすると、「命には限りがあるということで、切ないこと」だと受け取ってしまいがちです。
 しかし「諸行無常」とは、「切ないこと」なのではありません。むしろそれは、私たちが大きな循環のなかにある、ということだと私は思います。私たちのからだやこころは、さまざまな要素によって組み立てられつつ、また分解し、吸収と排出を繰り返しており、循環のただなかにあります。循環のただなかで私たちは生まれ、循環のただなかで私たちは死にます。それは、自分の意志とは無関係でありながら、存在することの根本としてあります。それを仏教では、「縁起(つながりとして存在する)」「無自性(自分という固定された存在はいない)」「空(固定された存在がなく、すべてのつながりとして常に動きつつ存在する)」とも言うのです。重要なのは、この循環を、私たちは自分の知覚で捉えられない、ということです。海のなかにいると水が見えないように、循環のただなかでは循環が見えないからです。けれども私たちは、事実として循環のさなかにあり、循環そのものとして存在しています。私たちが呼吸をすることも循環であり、食物を食べ排出をすることも循環です。木々や植物が排出したものをとりこみ、私たちの排出が木々を育てます。つまりは、生きているだけで、呼吸をすることだけで、私たちは「地球上の命のために、自分の命をいかしてい」るといえるということです。私たちは存在しているだけで、「地球上の命のために自分の命をいかしている」のです。
 けれども問題となるのは、この私たちの吸収と排出とが過度になったときに、地球上の循環のバランスをおかしくしてしまっているということです。私たちが自分の生活だけをまもり、それを便利であるように進化させると、ものごとの循環を自分たちの都合で早めたり遅くしたり、止めようとしたりします。このことがいろいろな災害を生むのです。たとえばプラスティックごみが問題となるのは、循環しないからです。プラスティックは細菌によって分解されず、紫外線で分解して小さな破片として残り、人体にも残留してしまいます(マイクロプラスティック)。これは私たちが便利な生活を追求した結果です。また、大規模な石油の使用は、代替するものを与えられないので、循環を阻害してしまっています。こうした循環を見ない生活が、結局私たち自身にも影響を及ぼしているといえるのです。循環を阻害しないような生き方を私たちはすべきだと思います。

2026.03.04 住職のおすすめ本

奥村正博『いまを生きるための般若心経の話』(港の人)

奥村正博『いまを生きるための般若心経の話』(港の人)

2026.03.04 住職のおすすめ本

佐々木閑『100分で名著 般若心経』(NHK出版)

佐々木閑『100分で名著 般若心経』(NHK出版)

かつて、2時間×6回の連続講義を頼まれた折に、講本として『般若心経』をとりあげ、解説をしたことがある。つまり『般若心経』について12時間しゃべったのである。そんなにしゃべることがあるのか、と思われるだろうが、掘れば掘るほど述べることはあるもので、じつは12時間でも足りないぐらいだったのだ。ところが今度は、『般若心経』の話を30分でしてくれ、という依頼をもらった。二十四分の一の時間で話をしろ、というのである。もちろん、内容を単純に二十四分の一にすればそれでよいわけはない。絶対しゃべるべきことと、しゃべらなくても良いことを分けて、要点を伝えなければならない。そのためには、『般若心経』を一旦分解して自分の中に落とし込み、長短自在に再構成できるようになることが必要である。

ところで『般若心経』とはやっかいなお経で、釈尊の死後、約五百年後に現れた「大乗仏教」という新たな仏教運動が、それまでの「釈迦の仏教」を否定する、ということがその内容のほとんどを成している。したがって自在に解説するためには、そもそも釈尊はなにを考えたのか、初期の仏教とはどういう教えか、それを『般若心経』はなぜ否定したのか(そして、否定することこそ釈尊の真の教えなのだと、なぜ主張できたのか)ということを勉強しなければならないのである。ひと月ほど、ずっとこうしたことを勉強してみて、ようやく人前でしゃべるところまで仕上がった。そこでつくづくわかったのは、『般若心経』を「やさしく」理解することはできないが、「わかりやすく」理解することはできる、ということだ。それは根本から順を追ってする説明に根気よくつきあう、ということである。 

『般若心経』を「わかりやすく」説明してくれる本としてこの二冊を推薦する。この二冊は、『般若心経』をその根本から順を追って説明してくれ、しかもその説明一つ一つがわかりやすい本である。「やさしく」はないが、「わかりやすい」のだ。一度ぜひ手に取ってみてほしい。

※奥村正博『いまを生きるための般若心経の話』(港の人)の写真は別途掲載いたします

2025.08.08 台所手帖

きくらげと金針菜

きくらげと金針菜

 金針菜と木耳きくらげは、大変相性がよい。炒め物でよく見かける。

 薬膳料理、といえば近頃よく耳にする医食同源のいたわり料理だ。食養生のことでもあり、食べることで体調のバランスを整えて心とからだを養う料理のことをさす。
美味しくないけど体に良い料理でしょ、とか苦いの?とか、特別の食材が要る料理なの?という少しややこしい先入観は、随分薄れていると思う。それくらい今の生活には「薬膳」という言葉が浸透してきている。健康でいられる時間は少しでも長い方がいいから、食養生について興味を持つ人も増えているからだろう。

 基本的なことは分かりやすくいろんなメディアや本、雑誌が解説してくれている。手軽に生活に取り入れられるし、試してみるとちょっとした不調の原因が判明して身体が軽くなる場合があるだろう。そうすれば気持ちも楽になり、生活することも楽しくなるかも知れない。薬膳は中国の伝統医学の基礎理論がもとになっているが、決して過去の遺産ではなく、それが現代の私たちの生活にも当てはまるという壮大な理論体系だ。縦長の島国の気候風土に根づいた民族でも一様ではない体質を、分析し調整する知恵の集積で「独自の、とか渡来の、」を越えた英知だと思う。今、その知恵に触れることができると考えただけでワクワクする。薬草はずっと人々の病を癒し、心をやすらかにしてきた。山野に実る恵は私たちを生かしてくれた。そう考えると、大地と海、山、空があり、季節があること、それを感じる自分があることに感謝でいっぱいになる。

 調子が悪い、と感じる時は症状だけを見るのではなく、その症状のもと、原因に向き合うことが大切。きれいな空を見て、美味しい空気を吸って、湧き出る水を飲んでほしい。もちろん、季節を正しく楽しく凌ぐ必要もある。少し気を付けるだけで心と體が楽になる知恵があるなら、みなさんと共有してゆきたいと思う。

 日本の発酵文化もしっかり見直されていて、若くて子育て奮闘中のママ達の世間話に「麹が好きで、塩こうじや醤油麹を自分で仕込んで使っている、甘酒も自分でつくる」と聞いて、はじけるような若さと美しさより、その食に対しての意識の高さにびっくりしたことがある。とても嬉しいと思った。街中で暮らす孫が、おばあちゃんの料理が美味しいといって昔献立を好んで食べに来る、という話も大好きなエピソードだ。私も、今は昔献立を習うことが楽しくて仕方がない。たいてい旬の野菜をどう保存するか、が料理のもとになっているように思う。
     
 ニキビが出始めた若い子が食生活を見直し、自分の身体に意識が向いて自分が体に取り込む物の成分表示を気にし始めるとしたら、それも素晴らしいと思った。自分の心と體を知ることができたらよりよく過ごすことができる。健康、万全でいることはとてもありがたいこと。

 結局「食べたもの」で「体はつくられる」のだ。ジャンクフードがダメというのではない。ちょっと減らして、そのぶんの予算でいい油を調達してほしい。少しの塩を振った野菜を炒めるだけで素晴らしい一皿ができるから。

 できれば大手の油メーカのものではなく、単価は高くても丁寧に絞られたなたね油やこめ油、ごま油を使ってみてほしい。かるく熱して、ゆでたきくらげと金針菜を炒めてみよう。金針菜でなくてもアスパラやきのこでもよい。アスパラは食感が似ている。金針菜は乾燥のものが割と手軽に手に入るので水に戻して茹でて使うとよい。私は住空間の横の小さな畑で金針菜を育てて何年かになるが、それなりの収量を得られるようになった。やっと細々とお裾分けができるようになった。薬膳の師匠にノカンゾウとヤブカンゾウ、どちらでも食べられるのかをお伺いしてみたら、どちらも食用になるとのことだった。よく見てみると、一重のノカンゾウも八重のヤブカンゾウも季節になるとあちこちに咲いている。しかし、ちゃんと茹でて水に晒さないとおなかを下す可能性があるので注意は必要だ。食材の薬効を活用する場合と、不要に摂ってしまわないように抜く(アク抜きともいう)「その技術」も、また「料理」ともいうのかもしれないなぁと、ちょっと思った。

作り方
1.乾燥木耳は水で戻し刻む。生木耳ならそのまま刻んで茹でる。

2.金針菜はゆでて水にさらし、炒めて、塩コショウを振る。

 あとはご飯と味噌汁、塩もみキャベツと粉ふき芋、とか、焼き油揚げか豆腐、梅干か佃煮干し椎茸、塩もみ小松菜などがあればいい。

☆木耳(きくらげ)について
    「きくらげ」には「きくらげ」と「あらげきくらげ」がある。
「きくらげ」=「黒きくらげ」

「あらげきくらげ」=「裏白きくらげ」
大型で裏側が白い毛で覆われている。分類学名は明らかに違う。流通しているのはあらげきくらげが多いようだ。黒木耳は本来珍しいのかもしれない、ということを密かに記しておこう。

  効能は
   補益気血 滋補強壮 滋補肝腎  潤肺止咳
   清熱(涼血止血) 活血(活血散瘀) 解毒(抗癌) 瀉下(潤燥利腸)

       まとめて簡単にいえば
 ミネラルが多いので血液を増やし、気を補い肺を潤す。空咳や口の渇き乾燥肌の改善にも有効。
 すばらしい薬効のある食材。腎と肝を補う。どの年代にも必要。ビタミンDも豊富背が伸びる。

☆金針菜について
    ススキノ科ワスレ草属
中国名 金針菜、黄花菜  萱草花 安神菜 忘憂草
和名  ノカンゾウ ヤブカンゾウ ユウスゲ  山菜の萱草。効能は「萱草嫩苗」のこと
      日本では山菜として若苗、若芽を食用 
分類学名は同じだか、種類がいくつかあり一重か八重か日本国内でもノカンゾウとヤブカンゾウの違いがある。どちらも食してみたがあまり違いは分からなかった。

    効能は
     清熱 清熱解毒 清熱利湿  
     理気(解鬱) 補血
            まとめて簡単にいえば
    体のほてりをとり、気、血を補い体内を巡らせる力がある。鉄分はほうれん草の数倍(20倍?!)

*Instagramをはじめた。まだ、あと1年は準備期間中。
*スタッフさんと試行錯誤しながら山の麓に畑を始めた。畑の師匠が沢山いてくださるのが心強い。
*薬膳精進料理のご提供は随時受付中。
*季節の養生講座を試験的に開催。鍼灸師の先生と協力して運営中。
  次回は「秋の土用のセルフ灸 (仮)」 

お問い合わせはHP、天月草木舎のInstagramよりお待ちしています。
皆さんの心と體を整えるお力添えになれば幸いです。